『策士策に吹っ飛ぶ(改訂版)』


「んっふっふ、これをチョコに混ぜれば……」
乙女のお祭りであるバレンタインデーの前日に、学食の厨房を借りてなにやら怪しい事してる少女。
名は三枝 葉留佳。リトルバスターズでも1、2を争うトラブルメーカー。
「生物部から拝借した(無許可)、この強力惚れ薬が有れば理樹君もイチコロなのですヨ。
ライバルも多いですしねこれ位はやらないと!」
またもやロクでもない事を画策中のご様子。毎度毎度懲りないもんである。
「ふぅ〜、はるちん頑張った。後はこれを理樹君に食べさせるだけですネ」
恋する乙女故の暴走と、見れば微笑ましいと言えるのかもしれない。
うん、きっと、多分。


んでもって決戦の二月十四。
葉留佳は問題のチョコを持って、理樹の教室へ赴いた。
「り〜き君。おはよー」
「あぁ葉留佳さん、おはよう。今日は早いんだね?」
葉留佳は理樹を見つけた。しかも運が良い事に周囲には誰も居ない。
「さて、理樹君。今日はなんの日か知ってるよね?」
「えっと、バレンタインデーだよね?」
「ぴんぽ〜ん正解です。と言うわけで理樹君にこれを進呈ずびしっ」
「あ、ありがとう葉留佳さん」
理樹を待ち伏せし、チョコを誰よりも早く渡す事が出来た葉留佳はニヤソと笑う。
(ふっふっふ後は理樹君にこれを食べさせて、私を見つめさせれば理樹君は私のと・り・こなのですヨ)


「ねぇ、理樹君すぐ食べてくれないかな?」
「えぇっ、今から? 後じゃダメ? 学校内じゃ流石にまずいよ」
「お願い理樹君。今すぐ食べて、食べてくんなきゃ理樹君は実は真性の(21)って校内に
言いふらしちゃうからネ?」
「ちょ、(21)は恭介専用の称号なんだから勘弁してよ!?」


「俺は(21)じゃねぇっ、シスコンなんだぁぁぁぁぁ!」
「きしょいわド変態っ! あたしの半径10mに近づくなっ!」
「ぎゃあああああああああああああああああっ!」
遠くではこのような兄と妹の微笑ましい(?)やりとりが有ったとか無かったとか。


「食べてくれますよネ?」
「うぅっ、しょうがないなぁ。」
もしこのまま断ると何やらかすか分かったもんじゃないので、理樹は溜息をつきつつチョコの包みを開けた。
中には見た目は普通の板チョコが一枚。
「見た目は普通だね。何か仕掛けでもしてるのかなって思ったんだけど」
「ぶ〜、ひどいなぁ理樹君。私だってこういう時くらい空気読みますヨ」
「ごめんごめん」
「ううん、気にしてないから、早く食べて食べて♪」
(やっぱり理樹君には押しの一手に限りますネ。 くふふふふふふ)
理樹はチョコを少し割って口に入れ、そのまま咀嚼して飲み込んだ。
(ミッションコンプリートォォォォォォッ! これで理樹君ははるちんのものダー)
某燃える闘魂ばりのガッツポーズをする葉留佳。
だが、そうは問屋が下ろさないのがこの世の運命(さだめ)。
と言うかこのまま上手く言ったら面白くもなんともない訳で。


しばらく待ってみたものの惚れ薬が効果を見せた様子は無い。
(アルェー? 絶対に効くって書いてあったのに?)
「ねぇ理樹君、私を見て、なんかこうときめきとか感じない?」
「え? 別に何も無いけど、どうしたの? なんか変だよ葉留佳さん」
(うぬぬぬぬぬ〜、量が少なかったか。ならばもっと食べさせれば良いだけの事ですヨ)
「ね、理樹君もっと食べて食べて」
「うわぁそんなにせかさないでよ」
「良いから早く〜、ハリーハリーハリーですヨ! なんなら口移しで食べさせてあげるからぁ〜!」
「ちょっ、ちょっと落ち着いてよ葉留佳さんっ」
「まさか、おっぱいに塗りつけてそれを舐めたいとかっ!? それは流石に恥ずかしい〜!」
「なんでそんな結論に至るのさ!?」
「お待ちなさいっ、三枝 葉留佳っ!」
「何ぃぃぃぃっ〜!? その声はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「全く、朝から何を騒いでるのよ? 迷惑でしょうが」
三枝 葉留佳の愛すべき姉にして天敵。泣く子も黙る風紀委員長、二木 佳奈多が腕組みしながら現れた。



「今日は校内でチョコを渡すのは禁止って、昨日教えたでしょう? 見つけたら没収するから
そのつもりでいなさいよって言ったのに、全くもう」
佳奈多は溜息をついて呆れる。
「とりあえずこれは没収ね?」
理樹の手からさっとチョコを奪い取る。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 私のチョコがぁぁぁぁぁぁぁ」
「これは放課後まで待たなかった貴方へのペナルティーよ。思い知りなさい」
言うなり、そのチョコを全部一気に口に頬張る佳奈多。
チョコレートは咀嚼され、飲み込まれ、佳奈多の胃の中に消えた。
「おーまいがーっ!」
佳奈多の行動にがっくり両膝をつく葉留佳。
「へへへへへへ……おっちゃんよぉ、真っ白に燃え尽きちまったぜ、真っ白にさぁ」
「何故に明日のジョー?」
言葉どおり真っ白な灰になりかけてる葉留佳としっかり突っ込み入れる理樹。
そんなコントのようなやりとりをしている最中
「はうっ!?」
佳奈多が白目を剥いてばったりと倒れてしまった。
「ちょ、ちょっとお姉ちゃん? お姉ちゃんしっかりしてっ!」
慌てて駆け寄り必死で姉の体を揺さぶる葉留佳。
「ん? あれ私何を…?」
「あ、お姉ちゃん気が付いた?」
「葉留佳っ! 貴方を一万年と二千年前から愛してるっ!」
目を覚ますと同時に佳奈多は情欲に濡れた瞳で葉留佳を見つめたかと思うと全力で抱き締めた。
「どひぇぇぇぇぇぇぇっ!? ナンナンデスカこの超展開ぃぃぃぃぃぃぃっ!?」


では、こうなったプロセスを説明しよう。
チョコを食べた佳奈多さんはチョコに入れられていた惚れ薬の効果により……
「何なの? この心の底から沸き上がる熱い衝動。葉留佳、私の可愛い妹。もう誰にも渡したくない」
そうよ、誰にも渡すものですか。あの子は私の、たった一人の私だけの妹」
妹の葉留佳への想いが危ない方向に増幅されてしまい。
「葉留佳葉留佳葉留佳葉留佳葉留佳葉留佳葉留佳葉留佳葉留佳葉留佳葉留佳葉留佳葉留佳葉留佳
はるかはるかはるかはるかはるかはるかはるかはるかはるかはるかはるかはるかはるかはるか
ハルカハルカハルカハルカハルカハルカハルカハルカハルカハルカハルカハルカァァァァァァ」
ごらんの有様である。この間実に一ミリ秒、宇宙刑事もびっくりなプロセスである。

「私はもう貴方無しじゃ生きられないの! だから、今夜は姉妹仲良く一緒に寝ましょう? 沢山可愛がってア・ゲ・ル(はぁと)」
「ちょ、ちょっとおねーちゃんキャラ違い過ぎるってば〜!?」
「大丈夫よ葉留佳、全部私に任せてくれれば良いんだから。もう学校なんてサボっちゃいましょ?」
「ふ、風紀委員長がそんな事言ってイインデスカ〜!?」
「フッ、愚問ね。愛は校則を越えるのよっ!」
「実に良い笑顔で言い切ったーーーーーーーーー!?」
「さぁ行きましょう、二人だけの楽園(エデン)へ」
「いやぁ〜私としましては、健全な姉妹愛でおなか一杯ですから。謹んでお断りしますです」
「もう、やぁねぇ私達の間に遠慮なんて不要よ? さぁ行きましょ〜♪」
「い、嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。へ、へるぷみ〜はるち〜〜ん!」
佳奈多は上機嫌でじたばた暴れる葉留佳をひきずって去って行く。
「一体なんだったの?」
亜全呆然と言った風で、ドナドナされて行く葉留佳を見送る事しか出来ない理樹であった。



その頃生物部では…
「大変です部長っ! 超象コロリXX(ダブルエックス)が盗まれましたぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「何ぃぃぃぃぃ!? 百合専用の惚れ薬のアレかぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
「そうですっ、来ヶ谷に依頼されてたアレですっ!」
「まずいっ、それがバレたら俺達全員断罪されちまうぅぅぅぅぅぅっ!」
「嫌だぁぁぁぁっ! 地獄の断頭台は嫌だぁぁぁぁぁっ! まだ死にたくねぇよぉぉぉぉぉぉっ」
「ほう? それは大変だなぁ?」
「げぇ!? 来ヶ谷」
「君達なら出来ると思って研究費の一部を都合してやったと言うのに、管理がなっていないな?
小毬君や鈴君、クドリャフカ君達に食べさせて、きゃっきゃうふふでムッハーする計画を立てて
いたのにどうしてくれるのかね?」
「いや、その、待て! 待ってくれ! 話せば分かる」
漆黒のオーラを纏いつつ怒る唯湖に、大慌てのバイオ田中。
「とりあえず断罪してやろう」
「ぎゃあああああああああああああ」
その日生物部は謎の爆発を起こし、部長以下生物部所属の生徒全員が全治一ヶ月の重症を負ったそうな。
自業自得とは言え合掌。

(終わり)

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