「う……ん……」
ベッドから人の起き上がる気配を感じ取り、僕は勉強机から目を離してそちらのほうへと歩いていく。
「ふぇ?ここどこ〜?」
寝ぼけ頭で混乱しているせいだろう、小毬さんはベッドから身を起こした状態でパニックに陥っていた。
彼女を刺激しないように、できるだけ静かに近寄り、優しく声をかける。
「目、覚めた?」
「あれ、理樹君?なんでここにいるの?」
「なんでって、そりゃあ、ここは僕の部屋だもの」
「あ、そうなんだ〜。……えええええええええ!?何で私、理樹君の部屋のベッドで寝てるのっ!?」
あ、やっぱりそういう反応になるよね……。
仕方ない、一から順にゆっくりと説明することにしよう。
「二人で初詣にいったことは覚えてる?」
「初詣?あ、そういえばそうだったねぇ」
「うん、それで、小毬さんは帰りの電車で寝ちゃったんだ」
「あー……日の出見るためにちょっと無理しちゃったから……」
「なんとか起こそうとしたんだけど、どうにも無理そうだったからそのまま僕の部屋へと運んだわけ。で、そのままずーっと小毬さんは寝てたんだよ」
「そ、そうだったんだ……ごめんね理樹君、迷惑かけちゃって」
「いや、別にいいけど」
「あ!ね、今何時?」
「えーっと、午後11時くらいかな」
「がーん!!!」
時刻を告げると、まるでこの世の終わりが到来したとでもいうかのようなショックを受ける小毬さん。
「あうう、もう終電行っちゃったよ〜」
「まあ、そうだろね……」
都会ならともかく、この辺りじゃ午後10時を過ぎたら電車はもう動かない。
「困りましたっ!帰れません!」
「とりあえず、今日は寮に泊まっていったらどうかな?」
「あ、そっか〜。理樹君頭いい〜」
いや、そうでもないと思うんだけど。
というか、寮以外に行くとこないだろうし。
「がががーん!!!」
と、またもや終末の日を想起させる叫び声を上げる。
「こ、今度はどうしたの?」
そう問いかけると、もう涙目を隠そうともせず、ベッドへと倒れこんでしまう。
「寮の部屋の鍵、家に置いてきちゃった……」
「ええー」
「困りましたっ!寮にも戻れません!」
がばっと起き上がり、頭を抱えて悩みだす。
「小毬さん……たまには後先考えようよ……」
少し窘めるように言う。
なんというか、おっちょこちょいにもほどがあると思う。
「うう、考えてるつもりなんだけど……そういえば、前にもこうやって理樹君にしかられたこと、あったよねぇ」
「天体観測のとき?」
「うんうん!……なんか私、まるで成長してないのかも……がーん……」
「まあ、小毬さんらしいとは思うけど」
「そうだ、いいこと考えました!」
そういうと、人差し指をぴっと立てて、僕の目を見て言い放つ。
「私をこの部屋に泊めちゃいなよ、ゆー」
「お出口はあちらです」
「わーん嘘嘘〜。理樹君、お願いだから泊めて〜」
「そういわれても……いろいろまずいって」
「大丈夫っ。私は全然気にしないよ〜」
「僕が気にするよ……とはいっても、他に行くあてもないなら、そのままそのベッド使っていいよ。真人のベッドは、なんか改造されてて眠りにくいと思うから」
「ありがとう、理樹君〜……ふわぁ……」
「もう、電気消そうか?」
「うん……ごめんねぇ……」
「いいって」
おやすみなさい、と声を合わせ、僕は電燈のスイッチをオフにした。
……冷静を装ってはいるものの、めちゃくちゃ緊張する。
耳をそばだてると、もうすでに小毬さんは寝入っているのか、かすかに規則正しい寝息が聴こえてくる。
……長い夜になりそうだな、と僕は思った。
翌朝、おめめパッチリお肌つやつやの小毬さんが帰っていくのを、やつれてげっそりした僕が見送ったのは、言うまでもないことだろう。
<了>
面白かったらぜひっ
あとがき
ささーっと書いたおまけです。所要時間約20分。え?適当すぎ?……おまけだもの(´・ω・`)
念のためいっておくと、理樹君がげっそりしてるのは悶々として眠れなかったからであって、決して他の意味はないのですよ?
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