物音が聞こえたような気がして、僕は目を覚ました。
 
(ん……今、何時だろ……?)
 
枕元の目覚まし時計に目を遣る。
時計の針は午前3時を指し示していた。
   
(……眠い)
   
それも当然だった。
最後に時計を確認したのが午前0時ごろだったから、最長で3時間程度しか睡眠をとっていないことになる。  
睡眠を妨害されたことに半ば苛立ちを感じつつも、シーンと静まった部屋の中で、僕は耳を済ませた。
一人きりの部屋。  
いつもはすぐ側で眠っている大きな気配も、今は感じられるはずもなく。  
……わけもなく、体が震えた。

  


コツン、コツン

  

 
毛布にくるんだ身をベッドから起こし、扉をまじまじと見つめる。  
……音は、そちらから聴こえて来ていた。
遠慮がちにノックするような、そんな音。  
ベッドから降りて、部屋の電気をつける。  
ぱっと輝く蛍光灯の灯りに、しばし目を眇める。  

   
(……寒いな……)  

   
思わず体を抱きしめる。
今年は例年にも増して寒い冬となるらしい。  
……体が震えているのは、寒さのせいだけじゃないかもしれないけれど。

  

 
コツン、コツン

  

 
再び扉に目を向ける。  
どうやら、気のせいじゃなかったらしい。  
確かに、この真夜中に、ただでさえ人の少なくなったこの学生寮の、この部屋に、誰かが来訪しているのだ。
すっかり眠気の飛び散った頭が、その事実を理解した。
 
ゆっくりと、扉へと近づいていく。
慎重にドアノブに手をかける。
……あいにくと、覗き窓みたいな洒落た物、このドアにはついていない。
だから、外にいる人物が誰かを確かめるためには、このドアを開けなければいけない。
ノブを回し、ぐっと力を入れる。
カチャリ、と音をたて、扉が少しずつ開いていく。
息を呑む気配。
影が視界に映る。
しかし、まだ相手の顔は見えない。
もう少し、もう少しだ。
さらに力を込める。
徐々に、真っ暗な廊下に部屋の灯りが差し込んでいく。
それにつれ、ぼんやりとしていた影が形をとりはじめる。

  


――予感がした

  


扉はもう、半分ほど開ききっている。
髪から下げられたリボンが、静かに揺れているのが目に映った。

  


トクンと一つ、心臓が高鳴る。
そして、完全に扉が開ききったと同時に、その人は、

  


「理樹君、明けましておめでとうございますっ!」

  


神北小毬さんは、満面の笑みを浮かべてそういった。

  


「小毬さん……?どうして、ここに……?だって、家に帰るって……」

  


予想外の出来事に、僕はただ呆然とそれだけを口走っていた。

  


「えへへ……」

  


彼女は、僕の問いには答えず、ただ一言だけ

  


「一緒に、日の出を見に行きましょう!」

  


そう、いった。
そして、その一言だけで、

  


「……理樹君?あ、もしかして、迷惑だったかなぁ?こんな遅くに訪ねてきたりして……」

  


もう、先ほどまで感じていた寒気も、孤独も、

  


「ああああ〜どうしよ〜。私そんなつもりじゃ……」

  


どこかへと吹き飛んでしまった。

  


「……迷惑なんて、そんなことないから」
「ふぇ?」
「うん……いいね、行こうよ、初日の出、見にさ」
「あ……うん!」

  


***

  


「こうしてると、あの時のことを思い出すね」
「うん?ああ、流れ星を見に行ったときだね〜」
 
今僕らは、夜の校舎の廊下を二人で徘徊している。
目指すべき場所は、あの時と同じ、空が見える場所。
違うのは、季節と、彼女への想い。
手をつないで行くのは同じだけれど、その意味は違う。
 
何一つ変わらないものなんてなくて、
もしかしたら違う世界の僕は、別の誰かと時を過ごしているのかもしれなくて、
でも、「この」僕は、今隣を歩いている女の子が、大好きで、大好きで。
 
「あの時、買出しに行った小毬さん、校門を乗り越えられなくて半泣きだったよね」
「うう……そんなこと、覚えてなくていいのに〜。理樹君いじわるだよ……半泣きだったのはほんとだけど……」
「あはははは」
「笑い事じゃないってば、もう〜」
 
月明かりを頼りに屋上へ向かいつつ、たわいない思い出話に花を咲かせる。
ぽかぽかと肩を軽く叩く彼女の存在が、とても暖かかった。
 
「もうすぐだね〜」
「うん」
 
屋上へと続く最後の階段。
一歩一歩踏みしめ、舞台へと上がっていく。
階段を上りきると、机と椅子の山の向こう、窓越しに月が顔を覗かせていた。
 
「んじゃ、僕が開けるよ」
「うん。はい、これ」
 
小毬さんからドライバーを受け取ると、それを使ってネジを外す。
そのまま足場の椅子を伝って外へと飛び出す。
 
屋上へ出ると、まず空を見上げてみた。
雲ひとつない星空。
この分なら、雨の心配もなさそうだ。
 
「ふわぁ……やっぱり寒いねぇ」
 
と、僕に続いて外へ出てきた小毬さんが、言葉通り体を震わせながら声を出す。
 
「もっと、着込んでくればよかったね」
「うん……でも、これがあるから〜」
 
そういうと、彼女は肩にしょっていたバッグから、折りたたみ式のブランケットを取り出してひらひらと僕に見せ付ける。
ジッパーを解くと、人一人ならすっぽり隠れてしまうぐらいの大きさに広がる。
それをもって、給水タンクの上へと登っていく。
 
「あ……」
 
と、梯子に足をかけたところで、ぴたりと動きを止めた。
 
「理樹君、お先にどうぞ〜」
 
照れ笑いを浮かべ、こりこりと頭をかきつつ僕に道を譲る。
 
「ああ、そっか。見えちゃうもんね」
「い、言わなくていいから〜」
   
暗闇でもわかるくらい顔を赤くする小毬さん。
そんな彼女を横目に、苦笑しつつ梯子に足をかけ、よじ登っていく。
給水塔の上から眺める景色は、以前とさほど変わるものでもなく。
   
「よいしょっと……わぁ、いい眺め〜」
   
僕に続いて小毬さんも登ってくる。  
適当な足場を見つけ、二人並んで座り込んだ。
   
「寒い〜……毛布毛布っと」
   
バサッと毛布を広げ、自分の身を包む。  
と、片端を僕のほうへと預けてくる。
   
「はい、理樹君も」  
「え……?」  
「そんな格好じゃ、風邪引くよ〜?」
「そ、そうだね。じゃあ……お邪魔します」
   
ごそごそっと衣擦れの音を立て、僕も毛布へと侵入する。  
一人ならば十分な大きさの毛布も、二人では少し狭い。  
自然、体は密着してしまう。
   
「あったかいね〜」  
「うん」
   
服越しに感じる彼女の体温が、すごく気持ちよくて。
ともすれば高鳴る鼓動を聞かれまいと必死に胸を押さえる。
   
「あ、そうだ……じゃーん!今日は『こんそめ』を買ってきたんだよ〜」
   
そういうと、彼女はバッグからポテトチップスの袋を取り出し、僕に見せる。
あの時は、うすしお。今は、コンソメ。
それは、些細な変化だ。
   
「理樹君は、こんそめ好きかな?」  
「嫌いじゃないよ。どちらかといえば、好きかな」
「よかった〜。じゃ、あ〜んして〜」
   
袋から取り出したチップを、僕の口へとあてがう。
抵抗しようかと思ったけど、彼女相手に無駄なことだと悟った僕は、素直に応じることにする。
   
「んっ……ぱりぱり」  
「どう?おいしい?」
「うん、おいしい」
「じゃあ私も……ぱりぱり、うん、おいしいよ〜」
   
ぱぁっと笑顔になる小毬さん。
つられて、僕も笑顔になった。
   
「こんな時間に起きてて、眠くないの?」  
「だいじょうぶっ。昨日、たくさん昼寝してきたから〜」  
「そっか」
   
そうして雑談しつつ、空を眺め、どれくらい経ったろうか。  
不意に、地平線の彼方が、薄暗い黒から、美しいオレンジ色へと染まり変わってゆくのを、僕は見た。
    
「あ……」  
「わぁ……」
   
それに気づいたのはほぼ同時で、  
感嘆の声を上げたのもまた、ほぼ同時。
光の玉が頭をもたげてゆくのを、二人、言葉もなくただひたすらに見守る。
   
「「……」」
   
雲ひとつない空が、徐々に明るみを帯びていく。  
それを見ていくうち、ふと既視感を覚える。  
以前、どこかで見た光景?
当たり前だ、初日の出なんて、恭介たちと毎年見ているんだから。

  


……そうじゃない、この感覚。
ちっぽけな悩みが薄れてゆくような、この感覚は――

  

 
「ふわぁ……理樹君、日の出って、すごいねぇ〜……ふぇ?どうしたの?こっちを見たりして……あわわ、私の顔に何かついてるのかなっ!?」

  

 
そうだ、覚えている。  
つい先ほどのことだった。

  

 
「ごしごし、ごしごし。……これで取れたかな?」

  

 
寮の、真っ暗な廊下に差し込んだ一条の光。  
開口一番、日の出を見に行こうといった少女の笑顔を見たときと、

  

 
「り、理樹君〜。なんとかいって〜」

  

 
そっくり、同じだった――

  

 
「理樹君ってば〜。うう……急にどうしちゃったの〜?……ってほわぁっ!?」
   
強く少女を抱きしめる。
何故かとめどなく流れてゆく涙を見せないように、ぎゅっと強く。
   
「り、理樹君?」  
「……やっぱり、すごいのは、小毬さんのほうだったよ……」
「そ、そんなことないよ?普通だよ、私は」
「そんなこと、あるよ。だって、僕、こんなに喉が、震えてる」
「理樹君……」
 
さらに強く抱きしめる。  
彼女にもう、戸惑いはない。  
行き場所を失っていた小毬さんの両手は、しっかりと僕の腰に巻きついた。

  

  

  


***

  

  

  

 
「…………」
「…………」
   
今僕たちは、駅から電車で10分程度のところにある神社へと初詣に来ていた。
祭壇の前に立ち、二拝二拍手一拝。
目を開けると、横には一心不乱に何事かを祈っている小毬さん。  
視線をずらし辺りを見渡すと、元日とあってか、神社はこの近隣の人たちで賑わっており、参拝客目当ての屋台なんかも出てきていたりする。
老若男女問わず、あちらこちらに入り乱れる様を、しばらく眺める。
と、横から肩を揺すられた。
 
「終わったよ〜」
「あ、うん」
   
御参りを終え、手頃な石段に並んで腰掛ける。  
と、小毬さんと目が合った。
   
「理樹君は、何をお願いしたの?」
   
にっこり笑顔で問いかけてくる。  
僕も笑顔で返し、答える。
   
「今年一年、皆無事に過ごせますようにって。小毬さんは?」
「私も、理樹君と同じ。あーでも、欲張りな私は、もう一つ、こっそりお願いしちゃったけどねぇ」
「へぇ……どんな願い?」
「それは、ひみつ〜」
「えぇー、気になるなぁ」
「えへへ、教えてあーげないっ。あ、見て!御神籤があるよ〜」  
   
そういうと、彼女は御神籤箱のほうへと走っていってしまう。
なんだかうまくはぐらかされた気がするけど、まあいいか。
僕も慌てて立ち上がり、彼女の後を追った。  
   
「え〜っと、一回壱百円だって〜。理樹君も、やっちゃいなよ、ゆー」
「うん、やるけど。小毬さんから先にどうぞ」
「うん、じゃあ私から……。むむむむ〜」  
   
目を瞑って念じるように箱の中をかき回す小毬さん。  
こういうのにも真剣になってしまう彼女が、なんだか可愛らしい。  
   
「これだ〜!はいっ!」
   
一気に箱の中から手を引き抜き、高々と手にしたものを掲げる。  
二つ折りにされた白い紙片が、太陽の陽を浴びてきらりとかすかに光った。
   
「…………」  
「…………見ないの?」  
「うう……これが私の一年の運勢を占うんだと思うとなんだか怖くて……そうだ、理樹君まだ引いてないんだし、引いちゃいなよ〜」
 
じゃあやらなきゃいいのに、なんてちょっと思ったが、もちろんそんなことは言わない。
料金箱に壱百円玉を投入し、箱の中に手を入れる。
 
「それじゃあ……これでいいかな」
「えええええ!?」
「え、何?どうかした?」
「そ、そんなにあっさり決めちゃうの?」
   
僕がひょいっと引いたのがそんなに意外だったのか、小毬さんは目を丸くして驚く。
そ、そんなに驚くことでもないと思うんだけど。
   
「うんまあ、悩んでも仕方がないし。こういうのって、すっぱり決めちゃったほうがいいんじゃないかなぁ」
「そ、そうなのかなぁ……」
「いやまあ、個人の自由だと思うけど」
   
自信なさげに俯いてしまう。
余計なことを言ってしまったかもしれない。
   
「…………」
「…………見ないの?」
「だだだだだって〜。理樹君の言葉聞いたら、余計に怖くなっちゃったよぅ……理樹君、代わりに見てくださいっ」  
「いやまあ」
   
そういって御神籤を僕に押し付けてくる。
……やっぱり、余計なことを言ってしまったようだ。
紙を受け取り、開いてみる。
   
(うわぁ……)
   
見ると、白い紙に黒い文字ではっきりと『大凶』と書かれている。
小毬さんの不安は、見事に的中していたのだった。
   
「理樹君?どうですかっ?」
   
目を瞑ったまま僕のほうにそう問いかける彼女を見て思う。  
これ見せたら、相当ショックだろうなぁ……。  
だーっと涙を流し『あぅ〜』とか言ってるのが目に浮かぶ。  
それはそれで可愛いかとは思うけど、やはり彼女には笑顔でいてほしかった。
朝に見た日の出のような、そんな笑顔で。
   
自分の引いた御神籤を開く。
そこには、まるで僕の願いが込められていたかのように、『大吉』の文字。
やることは、一つだった。
    
「理樹君?」
「あ、ごめんごめん。小毬さん、目を開けなよ、ほら、大丈夫だからさ」
「う、うん」
   
自信なさげに目を開く小毬さんに、『大吉』と書かれた紙を手渡す。
   
「おめでとう、小毬さん。大吉だったよ!」
「ふぇ?大吉?」
   
きょとん、と目を見開いて御神籤を見つめる。
信じられない、といった様子だ。
やがて、実感してきたのか、先ほどまでの不安な表情はどこへやら、一転してぱぁっと笑顔になる。
 
「わぁ、大吉だよ〜!私、初めて引いたよ〜!いっつも中吉とか吉とかで悔しい思いをしてたんだけど……理樹君と来たおかげかな?」
「そんなことないって。それは小毬さん自身がその手で引いたものなんだから」
   
内心ドキッとしたが、顔には出さない。
本当のことがばれたりしたら、なんだかみっともないというか、格好悪い気がする。
   
「それで、理樹君はどうだったの?」  
「あー、僕は、ほらこの通り、大凶だったよ……新年早々ついてないや、あはは……」
 
ひらひらと大凶と書かれたほうを見せる。
しかし、僕の予想とは違い、彼女はちょっと真剣な表情で僕を窺う。
 
「……」
   
エメラルドグリーンの瞳がじっと僕を見据える。  
その表情からは、感情までは読み取れない。
   
と、コツンと、僕の胸に、小毬さんのおでこがぶつかる。  
思わぬ接触に不意をつかれ、そのままの体勢で固まってしまう。
   
「小毬さん?だ、大丈夫?」  
「うん、大丈夫〜」  
「……何してるの?」
   
通りすがりの老夫婦に、『あらあら』と微笑ましい笑顔で見守られているのがものすごく恥ずかしい。
気のせいか、周囲の人の視線を根こそぎ集めてしまっているような気がする。
いやまあ、新年早々抱き合って(いるようなものだ)いればそうなるだろうけど。
   
「理樹君の運勢を、吸い取ってるんだよ〜」
「え……?」
   
おでこを僕の胸にくっつけたまま、歌を歌うように続ける。
   
「たとえば、10と−10を足して、2で割るとね、答えはゼロになるんだよ」
「うん」
「他の、どんな数字も、2で割ったら半分になっちゃうけど、ゼロだけは、特別なのです」
   
足を引っ張り合うでもなく、はたまた片方が片方を一方的に引きずっていくというものでもない。
その関係は、対等だ。
支えあうというのは、つまりはそういうことなんだと思う。
 
「私が大吉で、理樹君が大凶。二つ合わせて、ゼロになって、半分こしても、ゼロ。なんだかお得だよねぇ」
「あはは……でもさ、これだと僕が完全に疫病神だよね」
 
僕がそういうと、彼女は何も言わず、おでこをすりすりと擦りつける。
……やっぱり、ばればれだったらしい。
彼女が何も言わないのなら、僕も何も言わない。
僕が何も言わないのなら、彼女もまた、何も言わないのだろう。
さっきまでは気になっていた視線も、今は全然気にならない。
もう少し、このままで――
   
「あ、ちょこばなな〜」  
「え?」  
「あんず飴に、綿飴もあるよ〜」  
「こ、小毬さん?」  
「私、行ってくる〜」
「あ、ちょっと!?」
   
突然声を上げたかと思うと、普段の彼女からは想像もできない身のこなしで上半身を起こすと、そのままたったったーと軽快な足音を立てて屋台の列へと突っ込んでいってしまった。
途中何度か転びそうだったけど、なんとか持ちこたえたようで、そのままチョコバナナの列へと並んでしまう。
   
「本当に行っちゃったよ……」
   
ちょっとだけ残念な気はする。
でもやはり、ああいうのが小毬さんなんだと思う。
そして、そんな小毬さんを、僕は好きになったんだ。
甘いものが大好きで、おっちょこちょいで、いつでも笑顔な女の子。
ほくほく顔で2本のチョコバナナを受け取る小毬さんを見て、僕もなんとなく幸せな気分になれた。

  


***

  

 
「すー、すー」
   
帰り道の電車の中、僕の肩に寄りかかって眠る小毬さんを盗み見る。
よほど疲れていたのだろう、席へついて少しも経たないうちに、眠りについてしまったのだ。
それも無理はないと思う……どう考えても、夜更かしとか得意そうな人じゃないし。
いくら前日昼寝しておいたとはいっても、やはり夜は眠くなるものだし。
 
(…………)
   
ふと、悪戯心が沸き起こる。
きょろきょろと辺りを見回すと、幸いなことに乗客の数はまばらな上、こちらに注意を払っている人は誰もいない。
これはチャンスとばかりに、やわらかそうな小毬さんのほっぺをぷにぷにとさわってみる。
   
さわさわ、ふにふに
   
「んやぁ……ふみゅ……」
   
……やばい。  
これは、結構楽しいかもしれない。  
   
ぷにぷに、つんつん
   
「ほにゃあ……くー」
   
まるで起きる様子もなく、ひたすら爆睡し続ける小毬さん。  
このまま彼女が起きるまでこうしていたかったけど、あいにくとそういうわけにもいかない。
車内アナウンスが、もう間もなく目的地に到着することを告げていた。
 
「小毬さん、起きて!もう降りるよっ!」
「むにゃむにゃ……ふぁい、おりましゅ〜」
 
少し乱暴に肩をゆすると、彼女は半寝半起状態ながらもなんとか立ち上がる。
唇の端にたれていた涎に気づき、ポケットのハンカチでそっと拭ってやることに。
 
「よいしょっと……ほら、行くよ?」
「ふぁ〜い」
 
……このまま一人で歩かせるのは心もとないので、肩を貸し、二人三脚の格好で、ふたり降車口へと向かって行った。

  

<了>

  


面白かったらぜひっ

あとがき
 
年明けSS第二弾、というか管理人が書くのはここまでですが。葉留佳スキー(あるいははるかなスキー)を公言して憚らない作者ですが、実際カップリング書こうとすると理樹×小毬が一番書きやすい気が……こまりんこまりん!
 
なんだかえらくこっぱずかしい描写とかありますが、年明けってことでどうかご容赦を。ほんとはもうちょいシリアスになる予定だったのが、蓋を開けてみればあまあまとほのぼのを足して2で割ったような作品ができあがりましたとさ。
 
それではまた、会う日まで。
 

おまけ1  おまけ2
 
 

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