人を好きになるって、どういうことなのでしょうか?
あの日、私は一人の少年と出会いました。
これまで、外見のギャップで苦しんできた私が、初めてそんなことを気にせずに関係を結ぶことができた人。
私は、リキのことが、好きなのでしょうか?
ただ、嬉しかっただけではないのでしょうか?
「佳奈多さん」
考えていてもどうにも答えは出てきそうにありません。
だから私は、隣で静かに本を読んでいたルームメイトの佳奈多さんに聞いてみることにしました。
「何?」
「人を好きになるって、どういうことなのでしょうか?」
「……」
声をかけたときにはまるで興味なさそうで、こちらには見向きもしていただけませんでしたが、そう質問した瞬間、一瞬、ほんの一瞬だけですが、顔色がサっと変わったのが見てとれました。
……なにかまずいことをきいてしまったのでしょうか……。
「どうして、そんなことを?」
危惧していると、あっという間に佳奈多さんは気を取り直し、また興味なさそうな顔つきで本に目を戻してしまいました。
でも私にはわかります。
佳奈多さんが、平静を装っているだけということ。
事情はよくわかりませんが、彼女は明らかに動揺しています。
「え、えと、その、わからなくなってしまったんです」
「……」
「私、ほんとにリキのことが好きなんでしょうか?……単に、優しくしてもらって、嬉しくて、ああいう風に気兼ねなく人と接することができたらなぁなんて、憧れてるだけなんじゃないかって、その、えと……」
「私にわかるわけないじゃない、そんなの」
「そ、そうですよね……すみませんでした」
ぴしゃりと言い切られ、私は口を噤んでしまいました。
いつにもまして迫力があって、なんだか怖いぐらいです。
そのまま、会話は終わってしまいました。
***
「ねえクドリャフカ」
「はい、なんでしょうか佳奈多さん」
夜。
二人寝る準備を済ませ、ベッドに潜り込んだ後のことです。
静かになったその一室で、佳奈多さんが小さく、しかしはっきりと聴こえる声で声をかけてきます。
「私の見てる世界と、貴女の見てる世界、同じだと思う?」
その問いが先ほどの会話の続きだと気づくのに少し時間がかかってしまいました。
……佳奈多さんは何を言おうとしているのでしょうか?
「いえ、同じとはいえないと思います……佳奈多さんは私の知らないことをたくさん知っていますし、私のできないことをたくさんできますし、わたしよりおっぱいは大きいですし……」
「胸のことはどうだっていいの」
場を和ませるじょーくのつもりだったのですが、あっさりと一蹴されてしまいました。
がっくりです。
「逆もまた、然り。私は貴女ほど世界を見て回ったわけではないし、リトルバスターズとかいう変な集団の一員というわけでもない」
なるほど……言いたいことがわかってきました。
「つまり、私の世界と佳奈多さんの世界とは別物なのだから……」
「言葉は同じでもその定義まで同じとは限らないってこと。貴女が好きと思うなら、それでいいじゃない」
「はいっ!」
それはわかりました。
わかりましたけど
どうして佳奈多さんは、そんな悲しそうに言うのでしょうか?
「好きにもいろいろあるのよ。……いいわね、貴女はまっすぐで」
その声は、とても哀しい響きで。
何かを羨んでいるかのような、願いを込めているような、叶うことの無い希望を捨ててしまっているような、そんないろんな感情がない交ぜになっていて。
「相手に好きっていえるのは、幸せなことよ、クドリャフカ」
何故だか、私はその晩、涙が止まりませんでした。
<了>
面白かったらぜひっ
あとがき
もう半年ぐらい前にウェブ拍手のお礼SSで密かに公開していた作品です。
とあるチャットで、「お題を決めて30分でSS書いてみようぜ!」なんて企画が立ち上がった時に一筆したためた物の中で、多分一番コンパクトにまとまった作品、だと思います。お題は確か「好きということ」とか、そんな感じだったかと。
書いてみるとわかるんですが、30分でネタ考えて書くとか無理ゲーです。文章とか推敲する暇が全くないです。ノッてる時でさえ平均速度7kb/時という遅筆な俺なのであまり参考にはならないかもしれませんけどね(´・ω・`)
これを土台にして15kbぐらいの短編書こうかなとかちょっと思ったんですが、これはこれでアリなんじゃないかなと思って手は加えませんでした。文頭一字空けてhtml化しただけ。長ったらしい文章や凝った構成のSSも素敵ですけど、一切の無駄を省いた端的なSSっていうのも、オツなものだと思うんです。
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